Interactionist dynamic assessment: What does it mean? How to use it? What for?

公開講演会開催報告(2022年3月25日開催)

2022/07/29

シンポジウム

OVERVIEW

2022年3月25日に、オンラインにて公開講演会 “Interactionist dynamic assessment: What does it mean? How to use it? What for?” を開催した。教育において「評価」は切り離すことのできない側面だが、学習者の潜在的な言語能力を試験のみで測り切ることができないのは自明である。講演では、何のために評価を行うのか、どのような手段をもって評価を行うのかといった根本的な問いを出発とし、学習者の言語能力を総合的に評価するための枠組みについて理解を深める機会となった。

講演の内容

言語教育における評価は、おおまかに、学習のための評価(Assessment for learning)としての「形成的評価」、そして学習の評価(Assessment of learning)としての「総括的評価」に分類される。前者は授業中の小テストや単元テストなど、段階的に学習者の立ち位置を確認する役割を担うものであり、後者は学期中に実施される中間テストや期末テストなど、成績評価に直結する最終的な到達地点を測る役割を担うものである。今回の講演では、学習としての評価(Assessment as learning)、すなわち学習過程を支援するための評価の重要性が指摘され、その一つの方法として、“Interactionalist Dynamic Assessment”(相互作用による動的評価)が紹介された。
動的評価では、学習者の知識やスキルは静的(static)なものではなく、動的(dynamic)に発展していくものと理解される。Vygotsky(1978)の提唱する「発達の最近接領域(Zone of Proximal Development)は、実際の発達レベルは、学習者が独立して問題を解決できるのか、あるいは「導き」をもとに問題を解決できるのかの二つの距離によって決定され、最終的に「まだできない」、「助けがあればできる」、「助けがなくともできる」といった3段階に分けられる(cf. Vygotsky 1978: 86)。これに基づき発展した “Interactionalist Dynamic Assessment” では、助けの有無によって課題が達成される観点から学習者の認知能力を測ることが重要であると考え、学習者がすでに獲得している知識や能力といった従来の評価方法が対象としていた部分(「助けがなくともできる」レベル)のみならず、教師からのフィードバックを通して達成される潜在的な知識や能力を発見し、評価の対象とする。それらは口頭や筆記に双方において、教師側からのフィードバックによって学習者の自己修復(self-correction)を促すことで発見される。講演の後半では“Interactionalist Dynamic Assessment”を行うための具体的で実践的な手法についての紹介があった。
講演全体を通し、随所に教員自身の経験や体験を振り返る時間が設けられ、自由で活発な意見交換を行った。最後に、本講演会は、外国語教育研究センターが主催、また麗澤大学外国語学部外国語学科ドイツ語・ヨーロッパ専攻共催のもと実現したものである。そして講演者はドイツ語教育の方であるものの、英語で講演を行ってもらったことから、参加者も日本全国、そして海外からの申し込みがあり、盛況となった。今後、当センターが、国内のみならず世界レベルで、そして言語を超えて発展していくことへ寄与できたのであれば幸いである。
(文責 坂本真一 ドイツ語)

講演者:Karin Kleppin

専門分野はドイツ語教育、カリキュラム開発、学習評価、試験およびテスト開発。さまざまな国で研修やセミナーを実施し、教員養成にも力を注がれている。また、ドイツ国内の高等教育機関への正規留学を目指す場合の証明書となる語学能力試験TestDaFの開発にも参与されるほか、長年、ベルリン・フンボルト大学の教育品質改善研究所(Institut zur Qualitätsentwicklung im Bildungswesen)との共同で、テスト問題開発研究にも携わっている。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。

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