スペシャル・インタビュー:「英語ディベート」開発のねらい
三島雅一准教授
2024/02/14
カリキュラム
OVERVIEW
立教大学では英語教育の先進的な試みの一つとして、2020年から全ての学部一年生を対象に「英語ディベート」を実施しています。「英語ディベート」開発の中心的な役割を担ってきた三島雅一先生(外国語教育研究センター准教授)に、授業のねらいや学生に身につけてもらいたい力についてお聞きしました。
Q 英語カリキュラム全体におけるディベートの位置付けやねらい、特徴について教えてください。
三島雅一先生
「英語ディベート」は、立教大学の英語カリキュラムの特徴である「英語で学ぶ」を体現したコースと考えています。また、学生の英語力に関わらず、英語を使ってディベートという社会活動の達成を目指すグループプロジェクト型の授業です。
国際社会に生きる私たちにとって、多様な価値観や考えを持つ人々を理解し、根拠を伴って自分の意見を述べる力を持つことが不可欠です。
英語でディベートを行う準備の過程には、ディベートそのものの行い方の理解から始まり、ディベートテーマに基づく情報収集や精査、議論の構築の仕方、そして英語でそれを伝える力が効果的に習得できるように設計されています。英語を単なる語学として学ぶのではなく、ディベートという活動を通して生きた「実学」として学ぶことができるコースです。
国際社会に生きる私たちにとって、多様な価値観や考えを持つ人々を理解し、根拠を伴って自分の意見を述べる力を持つことが不可欠です。
英語でディベートを行う準備の過程には、ディベートそのものの行い方の理解から始まり、ディベートテーマに基づく情報収集や精査、議論の構築の仕方、そして英語でそれを伝える力が効果的に習得できるように設計されています。英語を単なる語学として学ぶのではなく、ディベートという活動を通して生きた「実学」として学ぶことができるコースです。
Q ディベートを通して学生にどのような力を身につけてほしいと考えていますか?
英語によるディベート活動を通して、グローバル社会を生き抜くために必要な力を身に付けてもらいたいと思います。具体的には批判的思考能力、情報収集能力、他者と協働する力、英語で効果的にコミュニュケーションする力です。これらは学部や専攻を問わず必須となる力です。文部科学省の示している「21世紀型スキル」とも密接に関連しており、汎用的コンピテンシーとして実社会で活動するにあたり重要な役割を持ちます。
Q ディベートを学ぶ面白さはどのような点にありますか?
普段何気なく耳にしている問題、自分とは関係がないと感じていたことなどを深く学ぶことができる点です。
ディベートはテーマを決めて、明確な反対・賛成を定めて議論を行います。意見を主張する際には、当然テーマとなる問題に関する知識を下地として、何故自らの主張が大切なのかを他者に説得力をもって伝える力が必要です。表面的に物事を理解していた自分を知り、世界をより鮮明に見られるようになる契機となるのがディベート学習の醍醐味だと思います。
ディベートはテーマを決めて、明確な反対・賛成を定めて議論を行います。意見を主張する際には、当然テーマとなる問題に関する知識を下地として、何故自らの主張が大切なのかを他者に説得力をもって伝える力が必要です。表面的に物事を理解していた自分を知り、世界をより鮮明に見られるようになる契機となるのがディベート学習の醍醐味だと思います。
Q ディベートを学ぶことはどのような意義がありますか?
“Everything you say is a form of argument.”という言葉があります。著名な社会言語学者であるDeborah Tannenによれば、私たちが行うあらゆるコミュニュケーションはその根源的な性質において他人に何かしらの働きかけを行うものであると述べています。1
ディベートはそこから更に一歩進んで、議論のための議論ではなく、また、勝ち負けを決めるためでもなく、他者を根拠に基づいて論理的に納得させる力を身に付けるための媒体となる性質を持っています。あらゆる情報が氾濫する現代社会において、不確かな情報や嘘を鋭く見抜き、何が大事なのかを考えられるようになることは非常に重要です。
1 Tannen, D. (1998). The argument culture: moving from debate to dialogue. New York :Random House
ディベートはそこから更に一歩進んで、議論のための議論ではなく、また、勝ち負けを決めるためでもなく、他者を根拠に基づいて論理的に納得させる力を身に付けるための媒体となる性質を持っています。あらゆる情報が氾濫する現代社会において、不確かな情報や嘘を鋭く見抜き、何が大事なのかを考えられるようになることは非常に重要です。
1 Tannen, D. (1998). The argument culture: moving from debate to dialogue. New York :Random House
Q 現在の社会において、英語を学ぶことはどのような意義がありますか?
英語は現代社会における事実上の国際言語です。
英語を母語とするか否かに関係なく、経済、政治、研究と、世界中のあらゆる場での公用語として広く使用される言語です。そのため、仮に日本から一歩も外にでないとしても、私たちの社会生活に密接な関係性を持ちます。英語ができれば、それだけで世界に繋がる手段として利用できる、有益なツールです。
英語を母語とするか否かに関係なく、経済、政治、研究と、世界中のあらゆる場での公用語として広く使用される言語です。そのため、仮に日本から一歩も外にでないとしても、私たちの社会生活に密接な関係性を持ちます。英語ができれば、それだけで世界に繋がる手段として利用できる、有益なツールです。
Q 本学オリジナルのディベートの教科書『Up for Debate』を作成しました。どのような特徴がありますか?
「自分の英語力でディベートができるはずがない。」
このように感じる学生は多くいるのではないでしょうか。また英語力が高い学生ではないと、英語でのディベートは難しすぎると感じる教員も多くいると思います。
立教大学で独自に開発したディベートの教科書は、学生のレベルに関わらず効果的かつ段階的にディベートを学習し、ディベートを成立させるための英語力を同時に鍛えられるよう設計されています。
このように感じる学生は多くいるのではないでしょうか。また英語力が高い学生ではないと、英語でのディベートは難しすぎると感じる教員も多くいると思います。
立教大学で独自に開発したディベートの教科書は、学生のレベルに関わらず効果的かつ段階的にディベートを学習し、ディベートを成立させるための英語力を同時に鍛えられるよう設計されています。
Q 最後に、立教大学の英語教育・グローバル教育における今後の課題やビジョンについて聞かせてください。
グローバル教育における英語学習の位置づけは、単なる文法や単語のような構造的言語知識の習得を主とするのではなく、「英語で何ができるのか」という点を軸に展開されるべきと考えています。
立教大学の英語教育は、この点において英語で実際に様々なことができる学生を育成することに注力しています。また英語を媒体として多様な分野の知識を習得するCLIL(内容言語統合型学習)を推進しています。
このように、質の高い英語教育を提供していくためには、英語の学びの過程や学習目的の変化に対応することができる、高度な専門性と教授能力、そして柔軟性を兼ね備えた教員が不可欠です。
そのため、一つ目の課題は新しい英語教育の形を理解し、実践できる教員を育成していくことです。
二つ目の課題は、いわゆる「受験英語」に慣れ親しんだ学生の意識の変革と考えます。英語の学び方や学びの目的について学生の内的なパラダイムシフトを促進するよう働きかけることが重要な課題となります。
最後に、先進的な英語教育を推進しつつ、その成果や意義について研究を行い、社会に広く認知させていくことも私たちの今後の大きな課題となると思います。
これらの課題に取り組みながら、「英語の立教」として革新的なカリキュラムを今後も継続して開発していきたいと考えています。
立教大学の英語教育は、この点において英語で実際に様々なことができる学生を育成することに注力しています。また英語を媒体として多様な分野の知識を習得するCLIL(内容言語統合型学習)を推進しています。
このように、質の高い英語教育を提供していくためには、英語の学びの過程や学習目的の変化に対応することができる、高度な専門性と教授能力、そして柔軟性を兼ね備えた教員が不可欠です。
そのため、一つ目の課題は新しい英語教育の形を理解し、実践できる教員を育成していくことです。
二つ目の課題は、いわゆる「受験英語」に慣れ親しんだ学生の意識の変革と考えます。英語の学び方や学びの目的について学生の内的なパラダイムシフトを促進するよう働きかけることが重要な課題となります。
最後に、先進的な英語教育を推進しつつ、その成果や意義について研究を行い、社会に広く認知させていくことも私たちの今後の大きな課題となると思います。
これらの課題に取り組みながら、「英語の立教」として革新的なカリキュラムを今後も継続して開発していきたいと考えています。
プロフィール
PROFILE
三島雅一
2016年立教大学ランゲージセンター教育講師、2018年外国語教育研究センター設置準備室特任准教授などを経て、2020年より現職。米国パデュー大学大学院博士課程修了。専門は第二言語教育研究。主な論文に「Teacher cognition and L2 writing feedback: A case of an experienced L2 writing instructor」(Writing & Pedagogy) などがある。
研究者情報はこちら
Teacher cognition and L2 writing feedback: A case of an experienced L2 writing instructor