学んでも使えるようにならない?それはあなた次第です

スぺイン語担当:泉水 浩隆 教授(専任教員)

2024/11/19

研究紹介

OVERVIEW

立教大学外国語教育研究センター泉水浩隆教授(スペイン語担当)にご自身の研究内容や今後の抱負等についてお聞きしました。

使えるように「する」覚悟を持って学ばなければ何事も使えるようにはなりません。その向こうに広がる景色を見てみたくありませんか?

先生の研究テーマや、現在取り組まれている研究についてお聞かせください。

2023年6月 Universidade de Vigo, Facultade de Filoloxía e Tradución で開催されたIX Congreso Internacional de Fonética Experimental (CIFE 2023) での学会発表。共同発表者の一人である清泉女子大学の木村琢也教授とともに

私の研究テーマは大きく2つ、1つは「スペイン語学」(特にその音声面)、もう1つは「スペイン語教育」です。前者については、音声分析用のソフトウェアを用いて、スペイン語の疑問文や句末のイントネーションがどのような動きをするのか観察したり、一定条件で音声を加工してそれがネイティブスピーカーや日本人のスペイン語学習者にどのように聞こえるかという知覚実験をしたりしています。後者については、こうした知覚実験等から得られた結果をどのように現場の発音指導に活かすか考えたり、また、既存の教材を分析したり、教室において各種機材をどのように利用したり応用したりするかについても興味を持っています。

ご自身の研究に興味を持ったきっかけについてお聞かせください。

もともと小さい頃から外国語に興味がありました。音楽が好きだったせいか、外国語の音の響きに特に興味を引かれました。記憶にある限りで、まとまった形で最初に外国語に触れたのは、小学校5年頃のNHKテレビの中国語講座とスペイン語講座だったと思います。もちろん文法などを理解するには至りませんでしたが、テレビの画面に映る海外の様子を見ながら、「今日は暑いです」とか「トイレはどこですか?」といった断片的なフレーズをいくつか言えるようになっていました。英語の講座のテキストもあったはずですが、なぜか英語にはあまり興味を示しませんでした。中学生から高校生くらいの時は、同時通訳にあこがれ、英語は好きな科目ではあったものの、英語以外の同時通訳になりたいと考えていました。高校時代に、ロマンス諸語(例えば、スペイン語やポルトガル語、フランス語、イタリア語などです)に強い興味を持つようになり、一時フランス語に相当傾いたのですが、最終的にはスペイン語を専門とする学科に入学しました。学科で最もお世話になったスペイン人の先生が言語学を専門とされており、また、大学2年生の時にフランス語を専門とする日本人の先生が担当されていた「言語学概論」という科目を履修して、その時にさまざまな言語をいろいろな角度から分析する面白さを知ったことが言語学を志すきっかけになったと思います。また、大学3年生の時に、今では言語教育の世界で知らぬ人のいないほど有名な先生が若手だった頃担当されていた「応用言語学」という授業で言語教育に対する興味も芽生えました。「外国語の音の響き」「ロマンス諸語」「言語学」「言語教育」、こうしたきっかけから延びるすべての直線の延長線上の交点に現在の私がいます。

小学2年生の時の発表会。背が小さくて椅子に座ると電子オルガンのペダルに足が届かないので、立って演奏しています。この頃から既にラテン音楽が好きでした

今でもオルガンは大好きです。時々教会のオルガンを弾かせていただいたりしています

このような書籍の編集にも関わりました。通訳になりたかったはずが、ことばの研究の方へシフトしてしまいました

自分がよく聴いていたラジオ講座に出演することになるなどとは思ってもいませんでした。2021年4月~9月(再放送:2022年10月~3月)NHK R2「まいにちスペイン語」入門編を担当しました

ご自身の研究の面白さ・醍醐味はどのような点にあるとお考えでしょうか。

博士論文に手を入れて出版した著書。表紙には中学の時に美術を教えてくださった恩師が描いた絵を使わせていただきました

日本人にとってスペイン語の発音は簡単だというのはよく言われることです。ですので、どうしても日本語と差異の大きい文法的な面に目が行ってしまいがちなのですが、こうしたよくある見方、既成観念をそのまま受け入れてしまっていいのかという根本的な疑問を持って分析に取り組むことが面白いのではないかと考えています。確かにスペイン語の音は日本人にとって他の言語と比べて比較的とっつきやすいものではありますが、「とっつきやすい=簡単」なのでしょうか?とっつきやすいからこそ逆にきちんとマスターするのは難しいとは言えないでしょうか?言語研究においては、こうしたことを小さなことからでかまわないので、一つ一つ解きほぐしていくことが大切なのだろうと思います。そのようにしてちまちまと観察してきた内容を博士論文としてまとめました。

学生時代(大学や大学院、海外留学など)の経験や学んだことについてお聞かせください。

学部のころは、学内でも「鬼」と呼ばれる学科にいたので、とにかく予復習に追われました。1日3時間程度のスペイン語の予習は当然で(というより、やっていないと授業中いたたまれなくなる)、予習した範囲も翌日には全て終わってしまうというペースが学部前半2年間延々と続きました。しかし、そのおかげで、学部3年の夏休みに1ヶ月ほどスペインへ研修旅行に出かけた際も何とか切り抜けることができましたし、大学院時代もマドリードで暮らした約2年の留学時代も耐えられたと言えるので、まともにことばが使えるようになるには最低でもこの程度はやらなくてはダメだということを厳しく教えてくださった当時の先生方には本当に感謝しています。マドリードでは、Casa do Brasilという学生寮にいましたが、寮生の3分の2がスペイン人、3分の1がブラジル人、その他、少数のメキシコ人、ポルトガル人、イタリア人などがいて、日本人は私一人でした(2年目に日本人がもう一人増えました)。院生が多いこともあって、寮は個室だったのですが、寮の部屋を一歩出れば必然的にスペイン語かポルトガル語を使わざるを得ないという環境だったので、言語学習には最適だったと思います。ブラジルの人たちはとてもフレンドリーで、ブラジルに日系人が多いこともあってか日本人である私にも普通に接してくれ、スペインにいながらブラジルやラテンアメリカ諸国のことを知るよい機会となりました。スペインに留学に行ったはずなのに、帰国する頃にはポルトガル語もある程度は使えるようになっていたという、まさに一石二鳥でした。

留学中住んでいたCasa do Brasilで撮影した写真。何故か寮生委員のようなことをやる羽目になりました

カーニバルの時期はみんなこんな仮装をしたり…。スペインやラテンアメリカの文化にどっぷり浸れた頃のいい思い出です

現在の大学でのお仕事について。内容や、楽しいところ、大変なところを教えてください。

必修のスペイン語科目、自由科目の「スペイン語演習」、それと「入門スペイン語」を担当しています。いずれの科目でも、とにかくスペイン語を使ってみる、新しい外国語を学ぶ楽しさ(と難しさ)を伝えようと努めています。立教では「言語B」と呼ばれるいわゆる「第2外国語」科目について、学んでも使えるようにならないなどという風評をしばしば聞きますが、それは何も外国語だけの話ではなく、使えるように「する」覚悟を持って学ばなければ何事も使えるようにはなりません。「楽しい」だけではなく、「厳しい」ところもないと見えない景色があるということに気付いていただければうれしいのですが、それが伝わっているかどうか気がかりではあります。

ご自身の今後の抱負や夢、研究計画についてお聞かせください。

今後もこれまでと同じ方向で、スペイン語学(特に音声面)とスペイン語教育の分野で格闘していくことになるのでしょう。どこで新たな気づきが生まれるか、楽しみなところです。

これ以外に今後伝えていきたいこととしては、スペイン語圏の魅力をあらゆる面について紹介するということがあります。スペイン語圏は日本から遠いところが多く、直接現地を訪れたり、現地の情報を得たりすることは必ずしも簡単ではないのですが、それでも私がスペインに留学していた頃に比べれば、ネットを通じたアクセスがはるかに進化したこともあって、状況は大きく変化しました。スペイン語の知識があれば、そうした障壁を越える一助となります。日本語への翻訳や英語圏のフィルターを通したニュースからではなく、直接スペイン語でスペイン語圏の情報を受け取ることが重要です。そのお手伝いができたらいいなと考えます。また、スペイン語に限らず、さまざまな言語を学んで多くの情報チャンネルを持つことの重要性と楽しさについても折に触れて述べていきたいと思います。

スペイン語圏は、スペイン語という共通する言語を用いながらも、多様性に富んだところです。学んだスペイン語を使って、是非いろいろなところを訪ねてみてください。(写真:テオティワカン/メキシコ)

(写真:マチュピチュ/ペルー)

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