音楽とドイツ語教育が奏でる調和

ドイツ語担当:牛山 さおり 准教授(専任教員)

2024/12/13

研究紹介

OVERVIEW

立教大学外国語教育研究センター牛山さおり准教授(ドイツ語担当)にご自身の研究内容や今後の抱負等についてお聞きしました。

先生の研究テーマや、現在取り組まれている研究についてお聞かせください。

共著で作成したドイツ語教科書

博士後期課程では幼児言語データ交換システムCHILDES(Child Language Data Exchange System)を使って、ドイツ語を母語とする幼児が心態詞(日本語の終助詞に似ている語)をどのように獲得するのかを論文にまとめました。また、この時期に共著で初修者向けの教科書を作成し、音声教育に関する教員研修に参加したことにより、授業でどのように音声面を扱うかというテーマに興味・関心を持つようになりました。

そして博論提出後は、器楽専攻の高校生・大学生にドイツ語を教える機会に恵まれたことがきっかけとなり、新しい研究テーマに着手することが出来ました。この数年間はドイツの音楽大学で実際に行われたレッスンを録画・録音し、会話の文字化データを研究してきました。今後は器楽専攻の学生に限らず、学習者言語の発話を収集し、できれば縦断的な視点から分析・研究することを視野に入れています。

ご自身の研究に興味を持ったきっかけについてお聞かせください。

ウィーンのベートーヴェン像の前で

小さい頃からピアノを習っていてクラシック音楽が好きでした。小学5年生の秋に区の海外派遣事業でウィーンに行ったことがきっかけで、音楽の都としての美しい景色に魅了されただけではなく、ドイツ語の響きに興味を持ちました。その後、ドイツ語の勉強を始め、高校1年生で交換留学をしたことが、今の私につながる最も影響のある経験だと思います。現地の高校ではドイツ語と英語に加え、フランス語、ラテン語も学んだことで、外国語学習への興味・関心が一層高まりました。

ご自身の研究の面白さ・醍醐味はどのような点にあるとお考えでしょうか。

私は話し言葉の文字化データを研究対象とし、必要に応じて音声データも確認しながら分析しています。幼児の発話データと器楽レッスンの発話、いずれも時間の経過とともに内容が変化するところに特徴があります。どのように発話が変わっていくのかを追いながら、内在されている特徴を見つけ出すことに面白さを感じています。

レッスンの会話研究から得られた知見は、音楽留学を望む学生を対象とする授業の一部にも反映することができたので、社会への還元という意味でも意義があったと感じています。

学生時代(大学や大学院、海外留学など)の経験や学んだことについてお聞かせください。

留学していた高校

高校時代の留学先は森に囲まれ修道院が併設されている静かな環境で、大変なことも色々ありましたが、ホストファミリー、友人、先生方に親切にしていただき、有意義に過ごすことが出来ました。オランダ、ベルギーが近い土地柄で、家庭内で複数言語を使用する友人もいたため、複言語・複文化を感じる環境で生活できたのも興味深かったです。大学時代は留学団体のOB/OG活動に携わり、出発前のオリエンテーション、来日した留学生のサポートなどを経験しました。この活動を通して様々な国に留学した友人に出会い、視野が広がったように感じています。

大学の学生閲覧室にて

大学院在学中には、マンハイム市にあるドイツ語研究所の客員研究員として滞在したご縁で、市内の幼稚園に通う移民・難民背景を持つ子供と保護者への言語支援策に触れる機会があり、祖国を何らかの理由で離れなくてはならなった人々が、新しい土地で生きていくために言語を身に着ける意義を考える貴重な体験となりました。このような問題についても、常に興味を持ち続けたいと考えています。

現在の大学でのお仕事について。内容や、楽しいところ、大変なところを教えてください。

2024年7月に開催された立教大学外国語教育研究センター公開シンポジウムにて

今年度から新しいカリキュラムがスタートし、試行錯誤の日々が続いています。私が自由科目で担当している授業では、音声面を重点的に取りあげています。学生が発音面で抱える難点を少しずつ克服することが、ドイツ語でコミュニケーションをする上での自信につながって欲しいと考えています。

立教で働く前からパイプオルガンを聴くのが好きなので、時折チャペルに演奏を聴きに行けることが、良い気分転換になっています。

ご自身の今後の抱負や夢、研究計画についてお聞かせください。

待降節の様子

学生にはドイツ語を学ぶと同時に、ドイツ語圏の文化、地域事情などを知ることで視野が広がり、選択肢が増えるという経験をして欲しいと思っています。また、短期・長期留学を希望する学生のお手伝いが出来たら幸いです。授業を通して出会う学生との縁も大事にし、将来的には立教でドイツ語を履修した学生が、学部・学年に関係なく集えるような機会を設けられたら嬉しいです。

そして長年続いてきたドイツ語教育の恩恵を受けた一人として、立教大学はもちろんのこと、日本国内のドイツ語教育の持続と発展に貢献できれば幸いです。

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