My Journey as a Researcher

英語担当:三島 雅一准教授

2026/02/18

研究紹介

OVERVIEW

立教大学外国語教育研究センター三島雅一准教授(英語担当)にご自身の研究内容や今後の抱負等についてお聞きしました。

先生の研究テーマや、現在取り組まれている研究についてお聞かせください。

私は外国語教員及び外国語学習者の主体性(エージェンシー)について、様々なシチュエーションにおける、自律的な意思決定プロセスや行動を分析し、学びの過程において教員あるいは学習者がどのように参画しているかを研究しています。とりわけ、専門分野である第二言語としてのライティング(L2ライティング)と関連する分野を軸に研究活動を行っています。

本原稿の執筆段階から直近では2025年10月に台湾で開かれた、Symposium on Second Language Writing 2025において研究発表を行いました。本研究ではプロジェクト型CLIL(Content and Language Integrated Learning)授業において、学生がどのようにデジタルツール(AIおよび非AI)を活用し、自らの判断で選択・活用しているのかを探ることを目的としています。特に、学習者の「エージェンシー(主体性)」という観点から、彼らがツールの選定や使用においてどのような決定を下しているのかに注目しています。研究対象となった授業では、学生たちは「マルチモーダル・コミュニケーション」に関する3つのプロジェクトに取り組みました。それぞれのプロジェクトでは異なる分析枠組み(レトリカル分析、社会記号論的分析、ジャンル分析)を用いて、テキスト、画像、音声などのマルチモーダル素材を批判的に分析する課題に挑みます。

こうしたプロジェクト型の学習環境は、学習者の言語運用能力だけでなく、ツールの選択や知識の構築、自己表現の方法に関する意思決定力も問う場となっています。当該の研究調査では、アンケートとインタビューによる混合研究法を用いて、学生が実際にどのようなツール(例:ChatGPT、DeepL、Canva、Google Slidesなど)を使用し、どのようにその使用を選択・評価したのかを分析しました。その結果、学生たちは慣れ親しんだツールには安心感と自信をもって積極的に活用する一方、生成系AI(ChatGPTなど)については使用をせず、意識的に使用を避けるケースも多く見られました。

この研究からは、以下のような新たな「エージェンシー」のかたちが明らかになりました:
  • 分類としてのエージェンシー:学習者はツールを「AIか非AIか」で明確に分類し、その分類に基づいて使用可否を判断する可能性。
  • 拒否としてのエージェンシー:生成系AIの使用を批判的に評価し、あえて使用しないという選択を行う学生も多く、これは「使わないこと」自体が主体的な選択であることを示しています。
  • 課題に応じたエージェンシーの変化:プロジェクトの段階によって、学習者の主体性のあり方(知識構築的、技術的、表現的)が変化することが観察されました。
これらの知見は、AI時代における学習者のエージェンシーの捉え方に新たな視点を提供し、教育実践におけるAIリテラシー教育や授業設計に有用な示唆を与えると考えています。

ご自身の研究に興味を持ったきっかけについてお聞かせください。

私が現在の研究テーマに至るまでには、「英語学習・教育におけるフィードバックのあり方」から「学生のエージェンシーとAI活用」へと関心が広がってきた過程があります。以下、査読付き論文を中心に、その歩みをご紹介します。

第1段階:L2ライティングとフィードバックの実践と文脈の関係(2018)
最初に関心を持ったのは、「第二言語ライティング教育における教師のフィードバック実践とその文脈的要因」でした。この関心は、私自身が指導現場で感じていた「なぜ同じような指導でも結果が異なるのか」という疑問に端を発します。このテーマに関する初期の研究は、査読付き国際ジャーナル Writing & Pedagogy にて発表した「Practices and Context of L2 Writing Feedback(2018)」にまとめています。

本研究では、1人の経験豊富なL2ライティング教師を対象に、当該教員のフィードバックがどのように教育的・個人的文脈に基づいて形成されているのかを詳細に分析しました。この研究を通して、「教師の認知(teacher cognition)」と「文脈」が教育実践をどのように形づくるかという理論的・実践的な知見を得ました。教員のフィードバック実践は、単なる「知識」や「信念」だけではなく、授業経験・学生の過去の成績・指導履歴・授業構成・指導可能時間(ライティング課題に関する面談の有無)・学生の感情への配慮など、複数の文脈的要因が複雑に絡み合って意思決定されていることが明らかになりました。特に、「ミス」と「エラー」の区別や、「書き手の能力に応じたフィードバックの調整」「対面での口頭フィードバックとの組み合わせ方」など、実践的かつ繊細な判断のプロセスが観察され、教師認知(teacher cognition)を「動的・文脈依存的プロセス」として捉える重要性が示されました。

これにより、L2ライティング教育において「文脈を伴った教師の意思決定の理解」が実践的知見を深める鍵であるという視点を得ました。

第2段階:プロジェクト型CLIL授業における学生のエージェンシー(2023)
次のステップとして関心が移ったのが、学習者の主体性(エージェンシー)です。特に、学習者がプロジェクトベースのCLIL授業の中でどのように意思決定を行い、デジタルツール(AIを含む)を活用・選別しているかという点に注目しました。このテーマに関する研究は、査読付き国際学会論文集である AsiaTEFL 2023 Proceedings に「Teacher Agency from a Sociomaterial Perspective: A Case of Teaching Debate to EFL Students」として掲載されました。

この研究では、プロジェクト型学習の中で学習者が見せる「分類エージェンシー」「拒否エージェンシー」「表現的エージェンシー」など、AI時代ならではの新しいエージェンシーのあり方を理論的に整理しました。
第3段階:生成系AIと学生の意思決定に関する最新研究(2025)
そして現在は、生成系AI(例:ChatGPT)を含むデジタルツールの使用において、学習者がどのように批判的な判断を行うかという点に焦点を当てています。この研究成果は、国際学会SSLW 2025での発表「Japanese EFL Students’ Use of Digital Tools in Project-based CLIL Classrooms」としてまとめられており、現在も発展的に研究を継続しています。

本文冒頭でも説明しましたが、学生が生成AIの使用をあえて避ける「拒否エージェンシー」、ツールをAIか非AIかで分類する「分類エージェンシー」、そして自己表現を重視する「表現的エージェンシー」など、新しいエージェンシーの概念を提唱しています。このように、私の研究関心は、「教師の実践と文脈」→「学習者のエージェンシー」→「AIとの関係性における意思決定」という流れで展開してきました。いずれの研究も査読付き学術誌または国際学会において発表されたものであり、学術的信頼性が担保された研究成果です。

今後も、AI時代における教育的エージェンシーのあり方について理論と実践の両面から探究を進めていく予定です。

ご自身の研究の面白さ・醍醐味はどのような点にあるとお考えでしょうか。

研究には大きく大別して、量的研究法と質的研究法の二種類が存在しますが、どちらの手法にもメリット・デメリットが存在します。私の研究では主に混合法や質的な研究法を用いて、統計的には観測しがたい、「何故」という問いに答える事を目的としています。また研究の過程で生のヒトの声に耳を傾ける事を意識しています。その上で外国語教育者や学習者の日々の何気ない学びの現場での多種多様な意思決定や行動原理におけるエージェンシーは、常に個と社会的・物質的繋がりが入り混じった狭間に浮かんでいるように見えます。

この複雑に絡みあった糸をほぐし、深く探求し、知見を得る事、即ち「複雑なもの」を複雑なものとして捉えて研究する事は、研究の結果がやるまで見えないという点で、好奇心や探求心を強く刺激されるものです。そこにあるのに、見えていない、見えてこないものを、研究を通して発見する過程に面白さと醍醐味を感じています。

学生時代(大学や大学院、海外留学など)の経験や学んだことについてお聞かせください。

学部時代には、英国グラスゴー大学に1年、大学院では米国にトータルでおよそ10年間留学滞在しておりました。海外留学で学んだ事の一番大きな事は文化や価値観が多様である事、そして何より自分の国を外から見る事を肌身で感じました。その結果、自分の価値観や考えも、留学経験により多様化したことが一番の収穫だったと思います。

当時を思い返すと「~でならなければならない」という枷から解き放たれた感覚を覚えた記憶があります。苦しい事もたくさんありましたが、結局のところ地道な努力は自分を決して裏切らないという事を知りました。自分を鍛えれば鍛えるほど、自分を自由にしてくれるという確固たる信念を持てるようになったことに感謝しています。

現在の大学でのお仕事について。内容や、楽しいところ、大変なところを教えてください。

現在大学での仕事は、立教の英語教育を運営・管理・改善をする業務を担当しています。針の穴を通すような繊細な調整が必要な業務であり、苦しいのと楽しいのが混在しているというのが正直な気持ちです。特に英語教育の改革を行う際には、立教大学全体に及ぶ変化がもたらすメリットやデメリットを慎重に議論し進めていかなくてはなりません。重責を伴う仕事である一方で、自身の経験や知見を最大限に活用し、誠心誠意でぶつかっていく中で、大きなやりがいも感じております。

今後も信頼できる同僚の先生方と一丸となって新しい価値を作りだし、立教大学の英語教育をより充実させ、内外を問わず賞賛が得られるような教育サービスを提供できるよう微力ながら尽力していきたいと思います。

ご自身の今後の抱負や夢、研究計画についてお聞かせください。

私の一英語教育者としての夢は当然、最高の英語教育を行う事です。変化が激しい世界で、学生のニーズも変わってきますので、常に自身をアップデートしていく事が必要と思っています。

一方で研究では、更に業績を残していくのが目標です。今後AIの発達が加速度的に進んでいく事が予想されるため、教育の形もそれにより変わっていく事は必然です。AIと外国語教育という研究分野は今後より注目される為、これに関連する研究を進めていきたいと考えています。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。

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