CEFR・CEFR-J概観(第一部前半)
「高等教育機関における言語教育の未来—CEFR-Jの開発と多言語への応用」開催報告(2024年7月31日開催) 執筆者:三浦愛香
2024/10/23
シンポジウム
OVERVIEW
立教学院創立150周年記念・外国語教育研究センター開設5周年記念
立教大学外国語教育研究センター公開シンポジウム
「高等教育機関における言語教育の未来—CEFR-Jの開発と多言語への応用」
※ こちらは、根岸雅史先生のご講演を基に報告しています。
東京外国語大学世界言語社会教育センター特任教授 根岸雅史先生
CEFRは、Common European Framework of Reference for Languages: Learning, teaching, assessmentの略ですが、一般的には、外国語学習者の習熟度を表す指標として認知されていることが多いかと思います。2001年にCambridge University Pressより出版され、2001年版に変更を加えより読みやすく編集されたCEFR Companion Volumeが2020年に発行されています。2001年版のCEFRは、実際には、大変膨大な資料で、外国語教育に携わる専門家においても、全ページを隅々まで読み込んでいる方は少ないでしょう。根岸先生のご講演は、その膨大な資料全体に直接触れる機会がなかったとしても、CEFRの概観を捉えることができる貴重な機会となりました。また、CEFR-Jとは、投野先生と根岸先生が中心となり、日本の英語教育での利用を目的にCEFRに準拠した枠組みのプロジェクトです。詳細については以下のサイトでご確認いただけます。(参照:https://www.cefr-j.org/events.html)
まず、根岸先生より、CEFRは、行動指向アプローチから成り、言語学習者を社会的成員としての言語使用者として捉えていること、また、言語は学習すべき教科ではなくコミュニケーションのための手段であることをご説明いただきました。また、異なる言語や文化的背景を持つ人々とコミュニケーションを取ったり協力したりする際に、異なる文化の類似点や相違点だけでなく、自分が相手の文化において何が未知であるのかを認識して、“otherness”を捉えていく概念の重要性についてお話しいただき、言語学習や言語教育に携わる一聴衆として、複言語・複文化主義を再考できる機会となったかと思います。
また、CEFRの基本要素として、テストや試験の点数のみに焦点を当てるのではなく、言語学習の成長の度合いを測るロードマップとしての役割を持つCan Do ディスクリプタ、CEFRで扱われる言語活動の4分野(受容、産出、やり取り、仲介)、そして学習者がどの言語のどの分野で何がどのくらいできるのかを把握できるプロファイリングとしての位置づけ等を一通りご教授いただきました。さらに、CEFRの参照レベルの記述は、多様な言語に汎用できることを想定していることから、あえて詳細に作りこんだ完成版にしていないこと、そして、ラテン文字を中心とするヨーロッパ言語を扱うことが出発点であったCEFRを、日本語のような文字体系が複雑かつ習得が困難な言語へ適用することの難しさについても言及いただき、今やCEFRはヨーロッパを超えて全世界で取り入れられているその広がりを確認することができました。
言語テストがご専門の根岸先生からは、Council of Europeが発行している言語テストのCEFRの関連付けについてのマニュアル(Relating Language Examinations to the ‘Common European Framework of Reference for Languages: Learning, Teaching, Assessment’ (CEFR)やManual for Language Test Development and Examining)やCEFR-Jプロジェクトについてもご紹介いただいています。
根岸先生のご講演は、外国語教育者がCEFRに準拠したカリキュラム開発や教材作成、学習効果の評価や測定に携わる際、O’Sullivan (2020)によるComprehensive Learning System (CLS)の概念であるCurriculum, Delivery, Assessmentの3つを統合させていくことの重要性に言及されて締め括られました。(CLSの概念の詳細はBritish Council, UKALTA, EALTA and ALTEより2022年に発行された Aligning language education with the CEFR: A handbookにも記載されています。)
まず、根岸先生より、CEFRは、行動指向アプローチから成り、言語学習者を社会的成員としての言語使用者として捉えていること、また、言語は学習すべき教科ではなくコミュニケーションのための手段であることをご説明いただきました。また、異なる言語や文化的背景を持つ人々とコミュニケーションを取ったり協力したりする際に、異なる文化の類似点や相違点だけでなく、自分が相手の文化において何が未知であるのかを認識して、“otherness”を捉えていく概念の重要性についてお話しいただき、言語学習や言語教育に携わる一聴衆として、複言語・複文化主義を再考できる機会となったかと思います。
また、CEFRの基本要素として、テストや試験の点数のみに焦点を当てるのではなく、言語学習の成長の度合いを測るロードマップとしての役割を持つCan Do ディスクリプタ、CEFRで扱われる言語活動の4分野(受容、産出、やり取り、仲介)、そして学習者がどの言語のどの分野で何がどのくらいできるのかを把握できるプロファイリングとしての位置づけ等を一通りご教授いただきました。さらに、CEFRの参照レベルの記述は、多様な言語に汎用できることを想定していることから、あえて詳細に作りこんだ完成版にしていないこと、そして、ラテン文字を中心とするヨーロッパ言語を扱うことが出発点であったCEFRを、日本語のような文字体系が複雑かつ習得が困難な言語へ適用することの難しさについても言及いただき、今やCEFRはヨーロッパを超えて全世界で取り入れられているその広がりを確認することができました。
言語テストがご専門の根岸先生からは、Council of Europeが発行している言語テストのCEFRの関連付けについてのマニュアル(Relating Language Examinations to the ‘Common European Framework of Reference for Languages: Learning, Teaching, Assessment’ (CEFR)やManual for Language Test Development and Examining)やCEFR-Jプロジェクトについてもご紹介いただいています。
根岸先生のご講演は、外国語教育者がCEFRに準拠したカリキュラム開発や教材作成、学習効果の評価や測定に携わる際、O’Sullivan (2020)によるComprehensive Learning System (CLS)の概念であるCurriculum, Delivery, Assessmentの3つを統合させていくことの重要性に言及されて締め括られました。(CLSの概念の詳細はBritish Council, UKALTA, EALTA and ALTEより2022年に発行された Aligning language education with the CEFR: A handbookにも記載されています。)